思い出の絵と対面

 義父は80を迎える頃からか、子どもの頃の家族との思い出を良く話してくれるようになった。もともと絵を描いたり、ミニチュアの模型など作るのも好きで、キャンドルの灯りの見える教会とか作ってクリスマスにプレゼントしてくれたり、車椅子の義母のために、昔の懐かしい家族の風景を月ごとの立体カレンダーにして喜ばせたりしてきた。最近はライフワークのように、子どもの頃住んでいたという洋館の模型を作っていたりする。今回の絵は、その家の壁にかかっていたということで、当時の写真も持参しての対面となった。
 美術館に寄贈されているその絵は、とても古いものらしい。飾られてはおらず、スタッフの案内で倉庫での対面となった。私達は初めて目にする絵だが、義父は何十年ぶりのその絵に懐かしそうに見入っていた。そして、当時の思い出などを語りながら、その絵の縮尺模型を作りたいと言っていた。
 絵をかけている引き戸のような網のレールが全部を引き出せなかったので、右端が良く見えなかったり、暗いので思うように写真も撮れず、実際には詳しいミニチュアを作成することは無理そうだが、義父にとっては、長い間の希望が実現したので、感無量のようだった。
帰りにその美術館の常設展を一通り見てきたのだが、有名な画家の絵が数点ずつあり、なかなか見ごたえがあった。中でも、その2週間後に自殺したというゴッホの横長の緑いっぱいの絵が印象的だった。

 激しい雨が降り出して、平和記念公園に寄るのは難しそうだったので、駅へのタクシーで一回りしてもらった。初めて見る原爆ドームは思ったより小さかったが、生々しく、ズシンと来た。